「シリコンバレー式 最強の育て方」~世古詞一著、かんき出版刊~

【20200801-07-53】副題は、「人材マネジメントの新しい常識~1on1ミーティング~」だ。働き方が、裁量型に徐々に変わってきたとはいえ、まだまだ私たちの回りでは統制型の組織運営が主流だと思っていた。しかし今般の新型コロナ禍が、一気に私たちの働き方の見直しを迫り、裁量型の働き方に転換せざるを得ない状況が生まれている。当然、会社だけでなくマネジメントもトランスフォームしなければならない。その時に、今注目されている「1on1ミーティング」とはそもそも何なのか?「ヤフーの1on1」(https://tutuimemo.at.webry.info/202007/article_1.html)の紹介を受けて、実際に試してみようと思ったので新たに本書を手に取ってみた。"1on1”の本質は、冒頭に記されているように「一般的な面談との大きな違いは、『これは部下のための時間』だということです。」ということだ。"任せる”ということに慣れていない管理職は、自分自身にかなりの葛藤があるかもしれないが、従来型のマネジメントスキルは既に限界に来ている。今こそ、部下だけでなく同僚や上司との関係性の新しい"あり方”に転換すべき時期だ。

【読書メモ】
「誤解を恐れずに言えば、マネジャーの仕事は、『100%正しい評価』を行うことではなく、『部下の納得のいく評価』を行って育成につなげていくことです。」(p.124)

「人間は知らないことや人に関してはクールに対応しがちです。~中略~人間は知らない人が取るネガティブな行動には、より一層悪いイメージを持ちます。それがセクショナリズムの正体です。」(p.192)

「会社がつくって社員に強制していくアウトサイドインの施策では、社員の自発性が失われがちです。」(p.204)

「1on1を継続させていくために最も大事と言えるのは、『自分の心構え』です。すべては自分の心から始まります。」(p.206)

「『あり方=人格』と『やり方=スキル』は、氷山によく例えられます。やり方は本書で記したように『見える(可視できる)』ものです。しかし、その下にはどっしりとやり方を支えるあり方があります。これは海面に沈んでいるので直接は見えません。本書の真の目的はこの見えないあり方をつくっていくことです。」(p.212)


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「一人称単数」~村上春樹著、文藝春秋刊~

【20200726-07-52】いつ誰と会っても、常に深い喪失感と不在感を抱き続ける。それは逆に自己の実在感を切望する裏返しとしての不在感なのだろうか。そのようにして読者は、自己の不在感に向かい続けることになる。『一人称単数』という題名は意図したものではないかもしれないが、前作の『猫を棄てる』(https://tutuimemo.at.webry.info/202005/article_7.html)から続く自己の表出が、見えないものを見ようとする強烈な問いに繋がる。今回の8作の短編集を、本の順番ではなく、①→⑧→⑦→②→③→⑥→⑤→④の順で読んでみた。どんなに順番を変えて読んでみても、常に深いところにある自分の穴の中にいつものように著者の世界観が分け入ってくることがわかった。

【読書メモ】
「ずいぶん不思議なことだが、瞬く間に人は老いてうしまう。僕らの身体は後戻りすることなく刻一刻、滅びへと向かっていく。目を閉じ、しばらくしてもう一度目を開けたとき、多くのものが既に滅び去っていることがわかる。」(p.22)

「そして私は今ここにいる。ここにこうして一人称単数の私として実在する。もし一つでも違う方向を選んでいたら、この私はたぶんここにいなかったはずだ。でもこの鏡に映っているのはいったい誰なのだろう。」(p.226)

「幸福というのはあくまでも相対的なものなのよ。違う?」(p.180)

「夢が死ぬというのは、ある意味では実際の生命が死を迎えるよりも、もっと悲しいことなのかもしれない。ときとしてそれは、ずいぶん公正でないことのようにさえ感じられる。」(p.74)

「そして僕らの人生なんて結局のところ、ただの粉飾された消耗品に過ぎないのかもしれない。」


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「コーポレート・トランスフォーメーション」~冨山和彦著、文藝春秋刊~

【20200725-07-49】新型コロナが来る来ないに関係なく、失われた30年で傷んだ日本経済社会システムを一刻も早く変革すべきことは誰の目にも明らかだ。そこに、たまたま世界的パンデミックが起きたことは、私たちが現状維持バイアスの呪縛から解放されるまたとないチャンスかもしれない。まだ誰にも分からないコロナ後の世界は、世界経済社会で誰が生き延びているかすらもわからない厳しいものなので、変革は一刻の猶予もない。「コロナショック・サバイバル」(https://tutuimemo.at.webry.info/202006/article_1.html)の続編として出された本書は、日本社会の現実を見つめ、新たな未来への処方箋を具体的に提示する。企業もそうだが、最後は私たち一人ひとりが個人として、これまでの生き方をどうトランスフォームするのか。厳しい現実から目を背けず、覚悟を決めて主体的に行動するその先に、より良い社会が開ける可能性が大いにある。今、是非読むべき一冊だ。

【読書メモ】
「こうした大きな破壊的な変化が起きた環境下で、改良、改善を旨とした同質的、連続的な日本の社会ー裏返して言えば事業と組織の何割かを短い時間で入れ替えるような不連続で大きな方向転換が苦手な、いわゆる日本の『カイシャ』モデルは完全に行き詰まってしまう。この30年にわたる停滞は、実はこうした根深い本質を持っていたのである。(p.29)

「結局、組織能力自体をもっとも重要な経営対象として、その可変性を大きくしない限り、持続的に競争優位を保つことは難しい時代に入っているのだ。今や現実の戦略は組織能力の従属変数であり、急速に変転を続ける最適戦略を打ち続けられる組織能力を持っていることが真の競争優位性の源泉なのである。」(p.107)

「結局、現在手持ちの事業ポートフォリオと機能(組織能力)ポートフォリオを不断に見直し、入れ替えることが日常的に行えることも両利き経営の必要条件なのだ。」(p.127)

「CX(コーポレート・トランスフォーメーション)的な改革は、会社の行動様式、構成メンバー個人の行動様式に大きな変容を迫る。それもかなりストレスフルな形で。」(p.262)

「目指すべきものが変わっていくことが間違いない時代には、目指すべきものが変わることに対応する組織能力を持っている企業が両利き経営の時代の勝者になっていくのだと思う。」(p.265)

「私たちはあらゆる意味で相対化、流動化の時代を生きており、新型コロナウィルスのパンデミックは、それをさらに加速させる可能性が高い。まさにトランスフォーメーションという概念は、国家や社会、そして国際社会の次元でリアルでシリアスな大課題になりつつあるのだ。」(p.342)

「要は、そうした動機付けと整合性で、かつ今起きているGとLの間の格差拡大問題と世代をまたぐ格差固定化問題を解決する仕組みを社会システムの中にビルトインしていくしかないのである。」(p.345)

「破壊的危機の時代、破壊的イノベーションの時代においては、まさに経営サービスを担う経営者、リーダー自身の能力が企業の生死と成長を大きく規定する組織能力となる。」(p.362)

「社会経済的な政策施策の多くを会社という社会システム単位を介在させて行う仕組みはもはや社会実態とかみ合わなくなっている。会社の溶解現象は既にかなり進行しており、今後、兼業、副業の増加と、今回のリモートワーク生活によって物理的な職場としても溶解が加速する可能性が高い。」(p.374)

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「ヤフーの1on1(ワンオンワン)」~本間浩輔著、ダイヤモンド社刊~

【20200719-07-50】組織能力は、それを構成する個が成長しなければ持続的に高めることはできない。しかし、個の成長に長期的にフォーカスを当てる企業はかなり少なくなっていると感じる。短期的な計画の達成に対して、時間のかかる個の育成は足かせとなるのではないか。そういったジレンマの中で、多様な部下を抱える管理職は彼ら彼女らとどう向き合えばいいのか。本書は、幹部育成プログラムに参加していた同僚から紹介された一冊で、読んでみて多くの気づきと元気をもらった。是非実践してみたいリアルなコミュニケーションツールだ。足元のwithコロナの時代の新たな働き方を考える上でも、4年前に著者が出した「会社のなかはジレンマだらけ」(https://tutuimemo.at.webry.info/201605/article_1.html)とセットで読むと、非常に参考になる。特に人事部門の人たちは今、必読だ。

【読書メモ】
「ヤフーの1on1は、言わば部下のために行う面談です。上司のための報告でも、連絡でも、相談でもありません。」(p.1)

「学びとは人間にとって『新たな意味の発見』であり、『知的興奮』や『楽しみ』を感じる瞬間である一方、そうでない場合もあるのです。とりわけ、大人の学びはそうです。大人の学びとは『痛み』や『違和感』を伴うことがあります。」(p.91)

「1on1では、部下の『行動の質』を向上させ成果を上げるために行うものであり、そのために『部下の行動』→『1on1での振り返り』→『行動の改善』というサイクルを繰り返していきます。」(p.117)

「上司は部下の思考のきっかけは提供できますが、学び自体は提供することはできません。」(p.126)

「完璧な評価制度はありません。そのため社員としては、本質的に会社の利益に貢献するよりも、評価制度上の評価ポイントを効率的に稼ぐことを意識せざるを得ないというのが現実でしょう。」(p.199)

「1on1の導入は人事が主導すべきなのでしょうか。もしかすると、人事が旗を振るよりも、自分のチームや事業部を成長させたいと考えるリーダーが、自分のできる範囲でやってみる方が、導入としては簡単なのかなという気もします。」(p.222)

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「上司の『当たり前』をやめなさい」~柴田励司著、クロスメディア・パブリッシング刊~

【20200628-07-48】よくあるダメ上司の"あるある50”の様に、リアルな光景を思い浮かべながら読んだ。今時、部下の前でやってはいけないことは頭ではわかっていても、無自覚にやっていることが大半だ。以前、著者の『組織を伸ばす人、潰す人』(https://tutuimemo.at.webry.info/201008/article_4.html)を読んだ時も、「そうそう、あるある」と思った。「もしかしてブラック上司」(https://tutuimemo.at.webry.info/201805/article_3.html)と続けて読むよいいかもしれない。ところで、何故こんな上司がいまだに生まれ続けるのだろうと思っていたが、実はそれが『当たり前』だったからだ。一方でグローバル化や成果主義、効率化重視、若手の抜擢人事などが進む中で、マネジメント教育もいつの間にか希薄化してきたように思う。この失われた20年の中で、希薄化というよりも形骸化し、やがて真のマネジメント教育が蒸発してしまったようにも思う。昨今の働き方改革を中心としたニューノーマル下で、上司の新しい存在価値とは何か?過去から未来に向けて、もう一度、上司像を変革するチャンスかもしれない。10年以上前に、著者の講演を「ワークプレイスラーニング2009」(https://tutuimemo.at.webry.info/200911/article_1.html)で直接聴く機会があった。当時から実践家としての目線は変わらない。


【読書メモ】
「個々人に自分を守る意識が強すぎると、組織内に『他責』が蔓延します。つまり、なんでも他人のせいにするのです。これは恐ろしいことです。」(p.66)

「アラフィフ以上の管理職が習得しておくべきスキル;①議論をまとめ、納得させるファシリテーションスキル、②情報を整理し構造化するスキル、③聞き手を惹きこむプレゼンテーション、④分かり易い文章・資料を作るスキル」(p.206から)


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皆既日食

日本で372年ぶりに夏至の日と重なって皆既日食が観られるとは、最近下ばかり向いて生活をしているこの頃、宇宙の営みを感じる貴重な日となった。ただ、今回は日食メガネを準備することもなく、日食のニュースを見て慌ててサングラスやセルロイドの下敷きを家の中で探しまわったが見つけることも叶わず、あきらめかけた。しかし、前回の日食の時の木漏れ日に映る木の葉の影が一斉に三日月形になったことを思い出し、紙に目打ちで小さな穴をあけて車のポンネットにかざすと、見事に日食の影が映った。人類が地球で生きることの何と奇跡的なことか。次回、日本全国で日食が観れる2030年まで、この謙虚さを維持できるだろうか。

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「管理職失格」~木村尚敬・柳川範之著、日本経済新聞出版~

【20200621-07-47】逆説的なタイトルだが、この新型コロナショック時代の管理職に向けて、具体的なマインドセットとアクションを促すエールメッセージだ。しかし一方で、過去の延長線上から一歩も出ることなくただ手をこまねいている管理職にとっては、失格の烙印を押されることになる。書かれていることは、新型コロナが出てきたから必要になったというわけではなく、日本の失われた30年から脱出する処方箋として繰り返し言われ続けてきたことの総括でもある。ただ、新型コロナによる世界的な社会経済の危機が到来が、一層、変革を促し、それができなければ失格どころか存在そのものが否定されるような局面に来ているということだ。自分が生き残るかどうかよりも、国家自体が生き残れるかどうかという危機感をあらゆるリーダーが共有し、自らポジションとリスクをとって行動すべき時代だ。対談で平易に読めるので、先ずは職場の管理職で共有しておきたい。

【読書メモ】
「新しいものを生み出さず、同質性が高く多様性のない組織は、もはや生き残ることはできない。時代に取り残されて、いつか淘汰されることになります。」(p.16)

「組織を動かすにはリーダー的な発想を全員が身につけることが必要であり、それこそがリーダーシップの本質なのだ。」(p.39)

「『リスク』って実は、思考停止キーワードなんですよ。」(p.93)

「やや逆説的な言い方になりますが、他社でも活躍できる態勢を作っていくことが、自社で活躍でき自社で評価される能力を高めていく重要なカギなのです。」(p.131)

「人間は普段見ているものが固定化すると、発想も固定化します。しかも、周囲の人間も同じように固定化しているので『もしかしたらこのやり方はおかしいのでは』と疑問を持つことすらない。」(p.149)

「結局のところ、組織力、リーダーシップ能力としてどれだけリスクに対する許容度を持てるかという点であり、リスクは徹底的に叩きに行く既存事業と、リスクをある意味エンジョイするイノベーションとの両利き力がまさに試される場面と言えるでしょう。」(p.246)

「リーダーシップの最大なる敵は、組織やリーダー自身の内面に存在する『変わることへの抵抗』です。この抵抗心を打ち破るカギは、ほんの少しでもリスクを取りに行く姿勢、同調圧力に屈しないスタンス・意見を明確に示すことです。」(p.252)

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