「岐路の前にいる君たちに」~鷲田清一著、朝日出版社~

【20200126-7-20】式辞というのは、形式的な美辞麗句が並べられているだけで退屈なものであることも多いが、時に格調高く感動的なメッセージに出会うこともたまにある。本書は、大阪大学の総長として、また京都市立藝大の学長として、延べ8年間にわたり大学の入学式、卒業式に著者が学生に向けて送ったメッセージを一冊にまとめたもので、実に格調高く、心に響く。著者の専門が臨床哲学という分野だからなのかもしれないが、これから大学で学び、あるいはこれから社会に飛び立っていく若者に向けてその人生に意味を与え、何のために生き、どうあって欲しいかというメッセージが明確で、学生でない我々が読んでも共感する言葉があふれている。あらゆる地域で格差が広がり、世界全体が不安定になって混迷を極める時代にあって、これらの言葉は一筋の光となり、未来を切り開いていく勇気を与えてくれるものになるに違いない。

【読書メモ】
「高度なサーヴィス社会というのは、皮肉にも市民をどんどん受け身にしてゆく、そして市民としての責任の意識を低下させていくものであるということです。」(p.10)

「自分が何を知っていて何を知らないか、自分に何ができて何ができないか、それを見通せていることが『教養』というものにほかなりません。」(p.21)

「『価値の遠近法』とは、どんな状況にあっても、次の四つ、つまり、絶対になくてはならないもの、見失ってはならないものと、あってもいいけどなくてもいいものと、端的になくてもいいものと、絶対にあってはならないものとを見分けられる眼力のことです。」(p.57)

「『幸福な生活』とは何か。だれもがいきいきと暮らせ、だれもが満ち足りた思いの中で穏やかに死んでいける社会とはいったいどのようなものか。社会のグラウンドデザインを描きかえるにあたっては、この問いが根底になければなりません。これを基礎としてあるべき社会を構想しなければなりません。」(p.138)

「《他者への想像力》とは、ふつう思いやりと言われますが、要するに他者を他者のほうから理解しようとすることです。その意味では、想像力とは自分が抱いているイメージをさらに拡げることではなく、自分をここではなく別の場所から見る力のことだと言うべきです。」(p.139)

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